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『イレブン・ミニッツ』 (2015/ポーランド、アイルランド)

   ↑  2017/04/04 (火)  カテゴリー: サスペンス、ミステリー








イレブン・ミニッツ [Blu-ray]


●原題:11 MINUT / 英題:11 MINUTES
●脚本、監督:イエジー・スコリモフスキ
●出演:リチャード・ドーマー、パウリナ・ハプコ、ヴォイチェフ・メツファルドフスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヴィッド・オグロドニック、アガタ・ブゼク、ピョートル・グロヴァツキ、ヤン・ノヴィツキ 他
●午後5時から5時11分までの「11分間」という限られた時間に焦点を絞り、様々な登場人物たちが繰り広げるありふれた日常の一コマ一コマが、やがて思いも寄らぬ結末へと収斂していくさまをモザイク状に描いた実験精神あふれる群像サスペンス。街に午後5時を告げる鐘が鳴る中、一人の男が慌てて家を飛び出し妻のもとへと向かう。その妻は女優で、優雅なホテルの一室で下心ミエミエの映画監督と一対一の面接に臨もうとしていたが・・・。







この『11 MINUTES』という映画は「アタマにきた!金返せ!」VS.「さすが巨匠!なんという傑作!」と、公開当時から批評家や世の映画好きの皆さんを真っ二つに分けていた作品でしたので、「さぁ~!私は一体どっち派なんでしょう!?」なんて観る前から変なとことでワクワクしていました。

面白い!にしても、面白くない!にしても、「私はどうしてそう思ったんだろう?」って一人でうじうじ考えるのが楽しいものですから。やることが暗いですね(笑)。それでですねぇ・・・・・"観客誰もが想像しえない驚愕のラスト・シーン"というヤツを目にした後、私のアタマにポッと浮かんだのは

「人生は寄りで見ると悲劇、引きで見ると喜劇」という言葉、これそのもの。なんじゃこら!私は笑ってしまいましたよ。

強烈なニヒリズム、それから悪夢としか言いようのない「壮大なる悲劇のピタゴラ装置」を目の当たりにして「監督、きっとお好きなようにやっちまったんですね!」と言いたくなりました。・・・ただ、問題はその後でして、モヤモヤ~っとした空気が一気に心の中に充満してきました。一気にですよ~


バラバラに見えていた多くの登場人物が複雑に入り組み、交錯したりすれ違ったり、巧みに錯綜しならがもラストに向かって一気に収束していく・・・という物語なら、パズルがカチっとはまった瞬間には爽快感やら達成感が湧き上がってくるはずなのですが、この映画はその類とはベクトルが真逆!もう、爽快感なんてバコーン!「それ見たことか!」と突き飛ばされたような幕の下ろし方。


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この"モヤモヤ~っとした感情"は一体どこから湧いてくるものなのかな?と考えてみると、やはりそれは「ポーランド」という国と、イエジー・スコリモフスキ監督の(良くも悪くも強烈に感じさせられる)存在感があるからなのかなぁとまず思いました。これは先入観と言うのかなぁ。でも、切っても切り離せない気がするんですよね。映画作品が生まれた土壌、って。


破壊、占領、分割、虐殺、消滅、復活という激動の時代を辿ってきたポーランド。
ソ連とナチスドイツからの占領、アウシュビッツ強制収容所、ワルシャワ蜂起、戦後は社会主義体制の崩壊という複雑で波乱に満ちた歴史を背景に、現在ではEU内で拡大するポピュリズムやナショナリズムの渦中ど真ん中。

そして、このポーランド映画界の"反逆児"と言われたイエジー・スコリモフスキ監督。彼の大胆不敵で型破りな存在感。過去の作品が「スターリン批判」「反体制的」とみなされ上映禁止→ならば、と映画製作の舞台を国外へと移し、祖国ポーランドを出て"亡命映画作家"として流浪の人生を送ったという監督の持つ人生観。



まるでカトリックにおける7つの大罪(傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲)を思わせるような登場人物たちが織りなす人生の交差(があったり、なかったり)。そして、複数のジャンルの映画が入り乱れるような奇怪な展開、緊張感、不条理さ。ポーランドという国や監督の生きざま、人生観、歴史観、世界観、宗教観。そういったものに静かに囁かれている気がしたのは、こんなところからなのかもしれません。


それから、もう一つ。
異様な不安感。緊張感。それはやはり「5:11」という数字にも表れている気がします。







この「11分」という数字について、スコリモフスキ監督は「適切な長さになるためには10分程度と考えた上で、12だと"十二使徒""十二人の怒れる男"といった意味が出てくるのでダメ。13は不吉な数字なので却下。審美的にも良いと思ったのが11だった」とインタビューでと仰っています。
 To get to the proper length of the film it should be around ten minutes, but ten is such a round figure...twelve has the connotation of the twelve apostles, 12 Angry Men . Thirteen is [ makes dismissive gesture ]. So eleven! It is a very nice figure, aesthetically speaking.
From Zen to Chaos- An Interview with Jerzy Skolimowski 【Notebook】


そして、この「5:11」というのは9/11からインスピレーションを受けた訳ではなく、今の時代の典型の一つ "不安の象徴" として置き換えたのだ、ということも。
Cineaste: I have heard interpretations that 11 Minutes was inspired by the events of 9/11. From your perspective as the storyteller, was this a conscious source of inspiration?
Skolimowski: No, that’s not true. No, no, no. I adapted this image as one of the archetypes of our time. The story, of course, doesn’t have any relation to the 9/11 events, but the image is used as a symbol of the anxiety of our times.

To Be Aesthetic and Not Boring: An Interview with Jerzy Skolimowski 【CINEASTE】


9/11は直接的には関係ないとしながらも、劇中繰り返し現れるのは、爆音を響かせて驚くほどの低空飛行で高層ビルの間を不安定に飛ぶ飛行機。「5:11」という時刻までのカウントダウン。この物語の中にいる間中、否が応でも心はずっとざわつき、ただただ嫌な予感しかしない感じられないのは確かです。



きっとこの世界で起こっている、そしてこれから起こるであろうあらゆる事件、悲劇、惨事などはどんなに恐ろしく悲しみに満ちたことであっても、結局は遠くから見たらまるでモニタのドット抜けの「黒い点」程度のものでしかなく、そんな中で怒りや憎しみを爆発させて右往左往しているちっぽけで陳腐な人間たちはバカみたいに無力なものなんだ・・・・って、うーん身も蓋もない言い方ですが、でもそんな風に思い切り突き放されたような印象をドカンと受けました。


私は人生において非常にたくさんの悲劇を経験しました。それが私の創作に反映しないわけがありません。(中略) もちろん楽しいことや楽観的な瞬間もありますが、最後の最後には、あまりいい結末にはならないものです。(中略) 我々は薄氷の上や奈落のふちを歩いているんです。あらゆる曲がり角には、不測の事態、想像を絶する事態が潜んでいます。確かなことなど何ひとつとしてなく、次の日、次の一時間、次の一分間でさえも不確かで、全く予期せぬかたちですべてが不意に終わってしまうかもしれないと思います。
Interview:『イレブン・ミニッツ』イエジー・スコリモフスキ(Jerzy Skolimowski)監督 【Z POLSKI】


※補足として
スコリモフスキ監督は、この映画製作以前にご自身の次男と元妻を亡くされていて、その頃とても陰鬱な考えに取り憑かれて暗い内容の夢ばかりを見るようになってしまったとのこと。そこからこの映画の"悪夢"が出来上がったのだそうです。
イエジー・スコリモフスキ『イレブン・ミニッツ』インタヴュー 【OUTSIDE IN TOKYO】


夢 [DVD]


そういえば、晩年の黒澤明監督が『夢』という映画を撮られましたが、これもかなりレベルの高い映像を魅惑的・幻想的に見せてくれたオムニバス形式の作品だったことを、上記インタビューを読んで思い出しました。

年をとると、その人の死生観みたいなものが強く投影されてくるのかなぁとも思いました。黒澤監督も画家を志していたというだけあってのかなりの腕前でしたので、絵コンテなんてそれだけでド迫力のアートでしたものね。絵心がある点でも、スコリモフスキ監督と似ているのかも・・・・



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「よい耳を持った映画作家」と評されるだけあって緊迫感を煽る挑戦的でインパクトのある音楽の使い方。メタファや予兆を散りばめ、技法や構図に囚われることのない自由で繊細で大胆な映像の数々。

元ジャズドラマーで、詩人で、画家で、映像作家の78歳。これも人生、とイエジー・スコリモフスキ監督に言われた気がします。



■この記事に関連する映画制作国、地域 : ポーランド映画 

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  2017/04/04 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

『THE KILLING/キリング』シーズン2 (2009/デンマーク)

   ↑  2017/03/14 (火)  カテゴリー: 海外ドラマ
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THE KILLING/キリング シーズン2


●原題:FORBRYDELSEN II / 英題:THE KILLING II
●企画・脚本:ソーレン・スヴァイストゥルップ
●出演:ソフィー・グローベール、ミケル・ビアクケーア、モーテン・スアバレ、ケン・ヴィセゴー、ニコラス・ブロ、プレーベン・クレステンセン、シャロテ・グルベア、スティーネ・プレトリウス 他
●シーズン1の「ナナ・ビルク・ラールセン殺人事件」から2年後。 捜査に没頭するあまり、家族も、パートナーも警察内部での信用も失ってしまったサラ・ルンドは、コペンハーゲンを離れ国境検問所で働いていた。たった一人ひっそりと生活しているサラのもとに、元上司のブリックスから連絡が入る。ある記念公園で発見された女性弁護士の遺体の事件捜査を手伝ってほしいという。一度は断るものの、サラ・ルンドはコペンハーゲンを訪れ、捜査協力を申し出るのだが・・・。




さぁ!まずは張り切って余談から!!
二十四節気の「啓蟄」が過ぎて、冷たかった土の中から虫さんたちも出て参りまして、いよいよ春分が目の前よ!というのにーですよ、今年に入ってこの2か月ちょっとなんだか色々とありすぎていけませんでしたのよ。

昨年泣いた「四十肩」が復活気味となり、その予感に怯える中で「ぎっくり腰」勃発。間髪入れず滅多に風邪をひかない娘が1月に2回も風邪(not インフル)でダウン、そんなバタバタの時にわたくし先週、左手の小指先を包丁でさっくりと・・・・

これだけあると「あれまたか」と意外と開き直ってしまい、取れてしまうのか繋がっているのかを確認して、一人黙々と片手を上げて止血して、押さえて、今日確認したら指先、ちゃんと繋がっていました。さぁここまでくれば何も怖くない。今年も張り切ってまいりましょう!・・・・と言いつつ、今日はまだリハビリモードで(笑)。







当ブログ【PC版】の右サイドに「映画&ドラマ ひとことレビュー」というコーナーがひっそりあるんですが、このデンマークドラマのシーズン1についてはそちらでちょこっとだけ触れたことがあります。で、最近どうしてもシーズン2&3を観たくなりまして。



今回もシーズン1同様、"11月"に起きた事件を【1捜査日=1話】で描き、事件発覚から解決までの10日間を全10話で描いていく仕様となっております。

前回シーズン1は全20話で、もう進みが遅いわ、物語は暗いわ、捜査のツメが甘いわでなんでこんなにストレス感じながら見続けるハメになってしまったんだよーと思いながらの完走でしたからね、今シーズンは10回ですよ楽勝でしょう!

・・・なーんて思っていたら、それがドッコイですよ。主人公のルンドさんは今シーズンも猪突猛進でブン投げ放題。な、なんと、相も変わらず全然成長していなかった!(セーターは新しいの着ていたけど)


でもね、そこが何というか。懐かしいというか親近感というか「完全無欠の女刑事」とは程遠いこの主人公の生々しい人間臭い魅力でありまして。やっぱり最後の最後まで食い入るように見入ってしまいました。







「THE KILLING/キリング」シーズン2のみどころ。
それは、対テロ法案を中心にデンマーク国内での政治的駆け引きを盛り込みながら、軍や政界を巻き込んでの捜査がスウェーデンやアフガニスタンといった国外にも渡り、その中でやっぱり巻き起こされるルンド刑事のムチャっぷり。これに尽きるでしょう!

国際問題にまで発展しかねないという、そのスケール感に加わるヒヤヒヤ感。どういうパワーアップの仕方をしているんだ、このドラマは(笑)。


ニコラス・ブロ演じるトマス・ブク法務大臣(名前がまたね、本当にブクブク太っている)の、「こんな世界ではいけないんだ!」という強い正義感が様々な政治家の思惑や政局の中でゆらゆらと揺れ動く有様は、見ていて「おまえ、どうしたいんじゃ!」と言いたくもなるのですが・・・・・でもでも、これが人間なんだろうなぁ。

ルンドも含め、このドラマの人々は誰一人として格好がつかず、不器用なんです。酷い失敗もするし、手痛い目にも合って、誰かを傷つけ、取り返しのつかない悲劇を起こしたりもします。でもそんな面をオーバーな感傷で飾り付けたりすることなく、そこを痛々しいままで鋭く強く突きつけてくるんですよ。ここがやっぱり北欧ドラマ独特の"ほの暗い魅力"なんだと私は思っていて、うーん、やっぱり見ずにはいられないんですよね。


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ラーベンの一人息子、健気なヨナスくん。どうか彼だけはすくすくと育っていけるよう守ってあげてほしいです。"彼"が最後に語ったことが真実かどうかはさておき、ラーベンはきっと、今度こそ、本当に立ち直れない。

あぁもう、それが解ったラストがともかく重くて重くて・・・・ヨロヨロになりながら観終えたシーズン2でした。


シーズン3の感想はいつになることやら~




■この記事に関連する映画制作国、地域 : デンマーク映画 北欧映画 

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  2017/03/14 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

2017年になっていますが・・・

   ↑  2017/02/11 (土)  カテゴリー: 雑記φ(..)
絶賛ぎっくり腰中でございます。
もともと背中や腰に痛みはあったのですが、これは決定打でしたねぇ。

痛いということは、生きている証拠でもありまして
とりあえず痛みが去るまで、整形外科の先生の仰る通りあと少し安静にしております。

もうすぐアカデミー賞なのにー!



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  2017/02/11 | Comment (2) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit

今年も本当にありがとうございました

   ↑  2016/12/31 (土)  カテゴリー: 映画いろいろ・・・
これまでほとんど意識したことがなかったのですが、年齢を重ねていくにつれ「訃報」というものが身近に感じられるようになりました。

どこそこの有名人が亡くなったそうですよ、とメディアで報じられていても「あーそうなんだー」程度のものだったのが、ここ最近になって「え、あの俳優さんが!」とか「こんなに早くに亡くなったの・・・」とガックリくるようになったんです。

そうか、自分が映画を観始めてから、リアルタイムで重なる俳優さんや監督の方々がそれだけ増えてきたってことなんだろうな。






アラン・リックマン
重厚な演技派であっても、やっぱり"映画愛"なら『ギャラクシー・クエスト』で。「ネバーギブアップ!ネバーサレンダー!」



ジョージ・ケネディ
彼が出ているというだけで『大空港』を観た思い出が。名脇役と言われますが私にとっては永遠のハリウッドスター。大好きです。



キャリー・フィッシャー
いつまでも私にとってのレイア姫は『スター・ウォーズ』のこのシーン。最後まで映画ファンたちに賑やかな話題を振りまいてくれました。



デビー・レイノルズ
『雨に唄えば』を観ればいつでも彼女の愛らしい笑顔に会える!昨日は娘とサントラを聴きながら一緒に歌って踊って遊びましたよ。


衝撃的すぎて忘れられないデヴィッド・ボウイの『地球に落ちて来た男』。こちらも同じくプリンスの『パープル・レイン』。ジョージ・マーティンがいたからこそのビートルズ。これからもジョージ・マイケルの歌声で迎えるクリスマス。



ウンベルト・エーコ
どうしよう、未だに読解しきれていない『薔薇の名前』の原作者であり知の巨人。過ギニシ薔薇ハタダ名前ノミ、虚シキソの名ガ今ニ残レリ。


戦争による強烈な虚しさを突きつけたマイケル・チミノ監督『ディア・ハンター』。芸術と向き合う緊張感、葛藤の長編4時間のドラマ ジャック・リヴェット監督の『美しき諍い女』



ゲイリー・マーシャル監督
TVからVHSに録画した映画を一生懸命観ていた時代の私の【思い出TOP3】に間違いなく入る『フォエバー・フレンズ』。



アッバス・キアロスタミ監督
一番最初に私を【イラン映画】へと招き入れてくれた『友だちのうちはどこ?』。ここから私と中東映画の旅が始まったんだろうなぁ。



アンジェイ・ワイダ監督
私にとっては最後に観た作品『菖蒲』。決して忘れてはならないものを教えてくれた映画監督の一人。その意志を、映画を観る者は引き継いでいかなくては。






いろいろなことがあった1年でした。いやー、本当にね、色々ありましたよ(笑)。
それでも何とか頑張ってきたぞー

そして。
本年も当ブログへ足をお運びいただきました皆様、心より感謝申し上げます。
ありがとうございました!

2017年も皆様にとりまして良い1年となりますように。
どうぞ良いお年をお迎えください。
そしてまた来年、お会いいたしましょう。

Have a happy new year!

2016年12月31日


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  2016/12/31 | Comment (4) | Trackback (0) | HOME | ↑ ページ先頭へ ↑ | edit