『ゾンビーノ』 (2006/カナダ)

はなまるこ

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ゾンビーノ デラックス版 [DVD]


●原題:FIDO
●監督:アンドリュー・カリー
●出演:キャリー=アン・モス、ビリー・コノリー、ディラン・ベイカー、クサン・レイ、ヘンリー・ツェーニー、ティム・ブレイク・ネルソン 他
●過酷なゾンビ戦争に勝利した人間たちは、ゾムコン社が開発した「調教首輪」でゾンビを従順なペットとして飼い慣らすことに成功。一家に一体飼うようになった世の中では、少年ティミーの家でもママの希望でゾンビを飼うことに。いじめっ子から助けてもらったのをきっかけに、ティミーはゾンビに「ファイド」と名付けて友達になる。しかしある日、ファイドが隣人のお婆さんを食べてしまったことから、とんでもない事件が巻き起こっていく・・・!




キャッチコピーは「僕の家にもペットのゾンビがやって来た!少年とゾンビの触れ合いを描いたゾンビ・ファンタジー」!!

陽光美しく輝く街並に、カラフルに並ぶ家々、クラシカルな装い。強いパパと優しいママ。どこかの国の古き良き時代を思い起こさせるホームドラマ風の舞台をガッチリと活かした上で、不気味なゾンビを過酷に働かせまくるというギャップが本当にシュールすぎて、あぁもうこの映画大好き!ちゃんと50年代風のドラマのように、車のシーンでも景色をはめ込みにするなどの細やかな設定も素晴らしく、無駄に完成度が高くて思わず悶絶してしまいました。前から観たい観たいと思っていましたが、期待以上に楽しめて幸せ気分です。



妻を顧みない夫より、心の通い合う"お手伝いさんゾンビ"とダンスするママ

『マトリックス』シリーズの時にはバァさんかと思っていたキャリー=アン・モス(失礼)が、プラスチックケースのような作り物の世界の中で生き生きと輝いていて、これにはちょっと感動してしまいました。世間体を気にするママかと思いきや、一転、独特の視点を持つ我が子を信じて守る強さや、ゾンビを思いやる愛情深さ、間違っていると思うことに対して信念を曲げない一本気なところなど、彼女の持つ凛とした美しさが尚一層引き立てられて、マトリックスよりも断然色っぽく、またカッコよかったなぁ!

それに、曲者トッド・ソロンズ監督の名作『ハピネス』(1998/アメリカ映画)で、ド変態人の喜びと悲しみを見事に演じて度肝を抜いてくれたディラン・ベイカーが、またまたパパ役として登場。期待を裏切らない"怪演"を見せてくれました(車の中でバンビちゃんみたいに可愛い男の子と二人きりになるシーンを見ると、反射的にビビってしまいます・・・)。世間的に"女々しい"と言われることに対して、痛々しいほど虚勢を張って自滅していく男性の役が本当に似合っている俳優さんで、彼の非日常的な雰囲気(というか"顔")が、この映画のフィクション性とピッタリ合っていて、期待通りのマイナスオーラ全開。素晴らしかったです。







お散歩する時は、首に紐をかけましょう!

でもこの映画、現代社会に対する皮肉なんかがピリッと効いていて(意外と子育てなんかについても!)、おまけにゾンビという「死人の生き返り」と共存しながら、キリスト教の教えを何となく定着させているところなども堪らなく興味深かったです。

例えば、他の子供や大人たちと違って「ゾンビを飼い馴らした社会」に疑問を持っているティミー君は、単なる労働力としてしか扱われないゾンビに対して人間(?)性を感じるなど、この映画の世界では相当の変わり者。一見美しく整えられたこの世の中が、実は不都合なものを排除して無理やり作ったものだという、人間の身勝手さ、傲慢さ、欺瞞なんかを子供ながらに薄々感じているからなんですよね。


以下は、大好きな家政婦ゾンビのファイドを心配するティミー君がママとする会話です。

「人間が死んでゾンビになったら、それは完全には死んでいないってこと?」
「えぇ、完全にはね。例えるなら・・・天国に行く前の"苦行"みたいな感じじゃない?」
「じゃあ、ゾンビは罪人なの?」
「人間はみんな罪をおかすわ。でも神様は私たちを愛してくださる」
「神様はゾンビも愛してる?人を殺しても?」
「それは・・・・ゾンビが人を殺すのは、そういう性質だからよ」
「じゃあ、ゾンビのせいじゃないの?」
「ママはそう思うわ」


何でもないようにサラッと交わされた会話でしたが、私はここでガーン!ときてしまいました。子どもって、大人が作った世の中の仕組みに対する矛盾を、こんな風に考えて一人悩んだりするものです。おまけに、それを素直に周囲の人に聞いてみようものなら「馬鹿げている」「そんなことは考えなくていい」と一蹴されたりします。ティミー君のパパや、ゾムコン社のボトムズさん。それからボーイスカウトで"洗脳"されている学校の友達・・・このあたり、いい皮肉の効かせ方ですよね。

でも、強い"マトリックス"ママだけは、ティミー君の疑問にちゃんと向き合い、ひとつひとつ丁寧に答えていってあげていました。ティミー君、話を聞いてもらえてすごく嬉しそう!






隣家のゾンビのタミーちゃんを心から愛しているミスター・テオポリスさん(これまた怪演!)や、ティミーと同じ感覚を持っているシンディちゃんたちには【幸せな結末】が待っていますが、世に中の矛盾に気づこうとしなかったパパや「ゾンビに情けを持ったらいけない」と言っていたボトムズさんの行く末が・・・(笑)。最後の最後まで、この映画は世の仕組みを嘲弄しているところが男前でした。カナダ映画、もっと応援したいなぁ。



そうそう、『ゾンビーノ』という思わず二流ゾンビ映画を彷彿とさせるようなこの邦題も、映画の味をうまく活かしていて面白いですよね!私は好きでした。


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