『バンテージ・ポイント』 (2008/アメリカ)

はなまるこ

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バンテージ・ポイント


●原題:VANTAGE POINT
●監督:ピート・トラヴィス
● デニス・クエイド、マシュー・フォックス、フォレスト・ウィッテカー、サイード・タグマウイ、エドゥアルド・ノリエガ、エドガー・ラミレス、アイェレット・ゾラー、シガーニー・ウィーヴァー、ウィリアム・ハート 他
●スペインのサラマンカ、マヨール広場。国際テロ対策の首脳会議が開催される会場にて、アメリカのアシュトン大統領への狙撃事件が発生した。事件の鍵を握る重要な目撃者は8人いたが、彼らが異なる地点・立場から見たものはそれぞれ違っていた。異なる視点から始まる8つの物語。真実はいっったい何なのか・・・?!




久しぶりに「どうなるどうなる!?」と、ラストシーンまで画面に惹きつけられる作品でした。1つの事件を、複数の人物のそれぞれの立場から90分というタイトさで駆け抜けるように見せるパワー&ストーリー展開には大満足でした。

何度も時間が巻き戻るたびに事件の裏にある「事実」が明らかになっていくプロットは、しつこくなるよー飽きちゃうよーの寸前で非常にうまく回避されているんですねぇ。うまいなぁ・・・

それに、やたらとキャストが大盛りなんですよね!
シガーニー・ウィーバーの役割が小さいのが気にはなりましたが、冒頭のツカミとして緊張感のある現場の仕切り方なんか彼女のイメージ通りで好印象でした。デニス・クエイドは、コレ、ちょっと前のハリソン・フォードとしか思えない役柄じゃないですか。いい位置に来たもんです。



フォレスト・ウィテカーやウィリアム・ハートなどのハリウッドスターをはじめ、ブルース・マッギルやジェームズ・レグロスなど(どこかで見た顔だ!!あの映画か!?ドラマか!?)の脇もガッチリ、さらにエドゥアルド・ノリエガやサイード・タグマウイなどの国際色豊かな俳優陣も出るわ出るわの目白押しで、もう目も心も釘付け。


そう!ドラマ『LOST』からはマシュー・フォックスが配されていますが、彼を見てこの「90分」という枠で一気に見せる見事な手腕はどこにあるのだろうと製作情報を見てみましたら・・・やはりハリウッドの娯楽大作映画や『プリズン・ブレイク』シリーズなどを手掛けている敏腕プロデューサーのニール・H・モリッツ氏が製作担当でした。ツボを心得ているはずですね。





ただですねぇ。
やはりそこはあくまでも【ハリウッドの映画】であって、政治物としてもこの筋立てが限界なのだろうなぁと痛感もしました。

皮肉にもこの作品の冒頭と結末部分で、メディアがこの事件を報道する場面が流れますが、それは所謂西側の情報であって、結局この映画の内容も「西側」のそれでしかないんですね。

昨今の映画やドラマでは、何かが起こる事件を作るには「中東のテロ」を題材にするものばかり。しかも、それを食い止めるヒーローは、アメリカ合衆国!大統領!USA!!USA!!というテーマが溢れ返っている状態です。

まぁ、西側の情報に浸っている時分には不思議でもなんでもないものですが、対米国側の人々からするとこれは不愉快極まりないもの。犯人はいつも中東の人間。悪人は必ずアラブ側。ヒーローはアメリカ。・・・という、いつもの図式です。アメリカ映画という娯楽の中ではこの辺りが限界であり、プロットとしても毎回代わり映えのないものばかりが当たり前のように作られているのが現状なのかもしれません。


反米感情の高い地域ではまったくこの逆のプロットで沢山の映画が作られ、人々に当然の如く大喜びで受け入れられていることを日本人はまだまだ知りません。というか、そのチャンスがあまりにも少ないのです。それはやはり、私たちが知らず知らずのうちに慣れ親しんでいるのは、(このような娯楽映画ですら)西側からの情報に偏っているからなんですよね。

アメリカ文化に浸ってしまった若者が罰を受ける映画とか、中東地域では世界に公開されなくとも真面目に作られていて、それを真面目に観ている人々もいるのが現状です。私からしてみれば「ナンダコリャ!!」とかなり腰が引けたものですが、トルコやシリアでは皆さん真剣に見入って感動していたので、彼らは大真面目に観ているのです。映画の力って、本当にすごいですよ。





というわけで、この『バンテージ・ポイント』。映画の構成はとても面白いのに、内容の方はあまり新鮮味のない【毎度お馴染みのアメリカ映画】で終わってしまったなぁと感じました。ザンネン。

ということで、次回は近年の反米映画代表作、トルコ映画『イラク-狼の谷-』について書いてみようと思います。今度は中東側からの逆襲ですよ。

   
レビューはコチラから:トルコ映画『イラク-狼の谷-』


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