『ブラック・サンデー』 (1977/アメリカ)

はなまるこ

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ブラック・サンデー [DVD]


●原題:BLACK SUNDAY
●監督:ジョン・フランケンハイマー
●出演:ロバート・ショウ、ブルース・ダーン、マルト・ケラー、フリッツ・ウィーヴァー、スティーヴン・キーツ、ベキム・フェーミュ、マイケル・V・ガッツォ、ウィリアム・ダニエルズ、クライド草津 他
●米大統領を含む8万人の大観衆に沸く巨大スタジアムの上空で、巨大飛行船を爆破するという“黒い9月”による無差別テロが計画された。イスラエルの特殊部隊とFBIが立ち向かうが、大量殺戮兵器と化した飛行船はついにスタジアムに突っ込んでいく・・・!「羊たちの沈黙」のトマス・ハリスのベストセラーの映画化。




1977年に夏休み大作映画として日本公開されるはずだった本作『ブラック・サンデー』に対し「上映予定の映画館を爆破する」という旨の脅迫があったため、政治的理由により公開一週間前に突然の上映中止命令が下された・・・というこの映画。

私にとっては"伝説的"な映画として、いつか観よう!とずっと思ってきた作品でした。



60、70年代の映画を観る時にいつも思うのだけれど、当時の熱気というか時代の空気感、混沌の中にある昂りは独特で、画面を観ているだけではとてもとても想像できないもの。

だからこそ、この時代の映画を観る時には、当時の映画のテンションやペース、ピッチなどに馴染むよう意識します。そのリズムこそが、当時存在した緊張感などをジワジワと煽り立てて、熱気をもたらしてくれるような気がするんです。






ベトナム戦争から英雄となって戻ったものの全てを失ったアメリカ人と、パレスチナの故郷を追われて難民生活を余儀なくされ、家族を無残に失った女。

自国民であろうと外国人であろうと"戦争"によって人生が変わってしまった二人が憎むべき相手は、同じ国家、アメリカ合衆国。

大勢の人々を死に至らしめようとする手段に"美"を感じる男の台詞は、とても正気の沙汰とは思えぬ狂気に満ちたもの。思わず身震いが。対して、女の方は「手段」ではなく「目的」のために"生き抜いている"という意識の差が明確。


そして「君ら(米国)が彼女をそうさせたんだ」という視点も挟むことで、アラブ側がベトナム帰還兵とともにアメリカに対してテロを仕掛けるという物語を、単なるパニック映画ではなく社会的、政治的にも重層的な構造を持たせている気がします。

当時の社会情勢を考えれば実在の「黒い9月」や日本赤軍の存在が浮かび上がるのも当然で、「上映を中止しろ。無視した場合はテロで実力行使に出る」と、現実世界に影響力や脅迫が直結した時代です。

が、それから数十年経った今現在でも、イスラエルやパレスチナ問題は何の解決も見せていない(どころか混迷を深めている)現実もやるせないもの。



そして、圧巻のクライマックスは、"作り物"からは伝わらない本物の観衆――1976年1月18日マイアミで行われた第10回スーパーボウル(ダラス・カウボーイズとピッツバーグ・スティーラーズの対戦)の実際の試合模様や大量のエキストラ――によるパニックの様には、ジリジリさせられるほど手に汗握ります。

ラスト1時間をかけて描かれる"戦い"の緊迫感は、これまで味わったことのないような凄まじさ。言い様のない猛烈な緊張感。





ラストまで一気に観終わって興奮が冷めた後、ふと思ったこと。

これだけ親ユダヤ国家であり、多くのユダヤ系に支えられて発展してきたこのアメリカ映画産業において、イスラエル不支持感情も沸き起こりそうな作品(結末は別として)が大作として作り上げられたというのは、やっぱり凄いことじゃないかなと思うのです。

寛容と不寛容が綯交ぜに見える国民性と政治の仕組み、そしてハリウッドとの関係性も興味深いものですが・・・。まだまだ分からないことだらけの国、世界の超大国、アメリカの映画でした。

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