【未体験ゾーンの映画たち 2017】からまとめて4本 『インビテーション』『エンド・オブ・トンネル』『パーフェクトマン 完全犯罪』『ダークレイン』

はなまるこ

はなまるこ

さぁ、今年も残すところあと僅か!
書き残しておきたい映画がまだ幾つかあるのですが、今日は今年観た【未体験ゾーンの映画たち2017】から一気に4本まとめておこうと思います。

宣伝費用が確保できずに"日本未公開"となってしまう世界各国の作品たちを、ヒューマントラストシネマ渋谷が集結させた【劇場発信型映画祭】。2012年より開催されています。結構"当たり外れ"もあるのですが「こ、これは・・・・!」という一本に出会えたり、「なんじゃこりゃ?」と思いつつも世界には色々な映画があるもんだなーと気楽に楽める雰囲気があるので、私は毎年楽しみにしています。

というわけで、その中から今日は、ミステリー要素の高かった面白作品を【アメリカ】【アルゼンチン・スペイン】【フランス】【メキシコ】からご紹介!





『インビテーション』 (2015/アメリカ)








インビテーション


●原題:The Invitation
●監督:カリン・クサマ
●脚本:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ
●出演:ローガン・マーシャル=グリーン、タミー・ブランチャード、ミキール・ハースマン、エマヤツィ・コーリナルディ
●恋人キーラと共にかつて自分が住んでいた邸宅に向かうウィル。ウィルのもとに、過去共に暮らしていたイーデンからディナーの招待状が突然届いたからだ。到着すると見違えるほどに陽気なイーデンと、彼女の現在の恋人デヴィッドがふたりを温かく迎え入れてくれた。しかし、何かがおかしい。不穏な緊張感の中、パーディーは予測不可能な展開を迎え・・・・。シッチェス映画祭グランプリ受賞傑作スリラー。




美味しい食事に高価なワイン。豪華なディナーと、気の合う仲間たちとのウィットに富んだ会話。それなのに、そこには冷たい風がスーッと通り抜けるような不気味な空気が・・・・。こわいよー

映画自体は、不穏な空気と緊張感に揺さぶられ続け、それが終盤にかけて一気に爆発していく!というストレートな構成になっています。ストーリーもほぼ予想通りの展開で、エンディングだってそれほど「ビックリ!!」なオチではありません。ですが、心に闇を抱える人々がこれほどいるのかと思わされるラストシーンは、現実問題として考えるとゾッするものがあります。


なので、この【衝撃のラスト20分!】とかいう適当なキャッチコピー、もういい加減勘弁してほしいです。初見の時は「どこが衝撃なんだ?」とかコピーに引き摺られてつい思ってしまいましたが、2回目に観た時は、心が引き裂かれそうなくらい主人公の痛みが伝わってきて苦しくなるほどでした。

映画で見るホラー、スリラー的要素というのは、人々が共通して怖がり、恐れていることがテーマにされるわけです。この映画で描かれる"恐怖"というのは、消え去ることのない深い悲しみ、怒り、恐怖と向き合わなくてはならないというトラウマの深さ、そしてそれらを克服していく過程は人それぞれであるはずなのに、そこに心理的な歪みが入り込むことによって生まれてしまう"心の暴走"。『インビテーション』 という映画は哀しみに満ちた"大人のホラー映画"なんだなぁと思いました。

因みにですね、この映画を観終わった後アタマの中に響いてきたのが「きっと本当の 悲しみなんて自分ひとりで 癒すものさ~」という、私の青春、渡辺美里さんの「My Revolution」。悲しみからは、きっと一生解放なんてされないでしょう。だから、ともに生きていく方法を最後は自分の力で探すしかないんだと思います。少しずつ。この映画を観た後に、ずっしりと感じました。






『エンド・オブ・トンネル』 (2016/アルゼンチン/スペイン)





エンド・オブ・トンネル


●原題:Al final del túnel /英題:At the end of the tunnel
●監督、脚本:ロドリゴ・グランデ
●出演:レオナルド・スバラーリャ、クララ・ラゴ、パブロ・エチャリ、フェデリコ・ルッピ
●事故で妻と娘を失い、車椅子生活となったホアキン。自宅に引きこもり孤独に暮らしていたが、徐々に金も底をつき、家の2階を貸し出すことに。そうして住み始めたのは、ストリッパーのベルタとその娘。2人に妻子の姿を重ねたホアキンは、徐々に明るさを取り戻してゆくが、ある日地下室で奇妙な音を耳にする。それは地下にトンネルを掘り、そこから銀行に押し入ろうと企む犯罪者たちの声だった・・・!




主人公の車椅子に乗ったおじさまが、濃いめの渋いイケメンであること。彼の車椅子の動き、見せ方が大変魅力的に映されていること。女の子とワンコの交流、チンピラどもの会話、腕時計などなど→数多くの伏線がラストに向けてバンバン回収されていくこと。

いやー、これは今年の拾い物でした!

主人公ホアキンが不自由な身体を逆手に取って行動を起こすところや、動けないことから生じる「もうだめだぁぁぁー!」「間にあわないー!」「逃げてぇぇぇ」感に見事にハラハラさせられました。それに、計算し尽くされたであろう滑らかなカメラワーク、低い位置からの印象的なショットなど、セリフに頼り過ぎることのない洗練された映像の数も魅力的でした。

チンピラの悪行や非情なやり口には目を背けたくなるようなシーンもあるのですが、あの思いもよらないラストには本当にやられましたよ!!良い意味で「嘘でしょー!?」って。運に好かれる人、見放される人。頭の良いイケメンには"運"も味方するのだなーと心から思った映画でした。






『パーフェクトマン 完全犯罪』 (2015/フランス)





パーフェクトマン 完全犯罪


●原題:Un homme idéal / 英題:A PERFECT MAN
●監督:ヤン・ゴズラン
●脚本:クリスティン・リチャード
●出演:ピエール・ニネ、アナ・ジラルド、アンドレ・マルコン、ヴァレリア・カヴァッリ、ティボー・ヴァレンソン、マルク・バルベ、ロラン・グレヴィル
●作家志望の青年マチューは、運搬業で生計を立て屈折した日々を送っていた。ある日、孤独死した男性の遺品を片付けていると、故人が書いた日記をみつける。思わず日記を盗み、自分が書いたように仕立て出版社に売り込んだところ、本はたちまち大ヒット。一躍ベストセラー作家となり周囲にもてはやされ、名声と富豪の娘アニーを手にしたマシューだったが、ある日サイン会の席上で「盗んだものの代償を払え」と男から脅迫され、次第に人生の歯車が壊れていく・・・・。




行き当たりばったりの行動には知性の欠片も感じられず、実力もないのに嘘に嘘を重ねてガンガン追い込まれていくのが主人公のマチュー君です。

はぁスミマセン、この主人公のヘナヘナ男なんですけれどね(←私にはそう見える)、人気作家としてもてはやされた後の行動も、事故の偽装も、事件の隠ぺい工作も、全部が全部甘すぎて見ているこちらがこっ恥ずかしくなりました。だいたい感情表現も語彙もぺらっぺらに薄っぺらいのに、この挙動不審なヘナチョコ男に骨抜きにされるなんて、皆どうにかしてるわい。って、これは個人的な趣味の問題なのでしょうか。

ま、次から次へと災難を運んでくるマチュー君がどこまで堕ちていくかを見守るだけで1時間半くらいがアッと言う間に過ぎていくわけですが、最後は「警察&消防の捜査をナメとんのか!?」と思うような偽装工作で【完全犯罪】からは程遠すぎ・・・・・。そういった意味では絶句!のラストでした。

虚栄心なんて一時くらいは自分を満たしてくれるのでしょうけれど、所詮は虚飾。偽りの姿ですからね。自分で自分を苦しめるだけでなく、様々な人を巻き込んでいったことがマチュー君の最大の罪ですね。窮地に追い込まれてからドカン!と爆発した才能があったのだから、コツコツ努力すればよかったのになぁ。







『ダークレイン』 (2015/メキシコ)






ダークレイン


●原題:Los Parecidos / THE SIMILARS
●監督、脚本:アイザック・エスバン
●出演:ルイス・アルベルティ、フェルナンド・ベセミル、ハンバート・ブストー、アルベルト・エストレヤ
●その夜、世界中が、未曽有の激しい豪雨に見舞われた。嵐に怯える人間たち。だが、その雨に紛れてやってきた“何か”こそが、真の恐怖だったのだ…。時を同じく、人里離れたバス・ステーションに居合わせた8人の男女が、奇妙な現象に巻き込まれる。1人の女性ローザがウィルスに感染したような症状を見せ、狂っていく。ラジオによると、雨による原因不明の伝染病で外でも混乱が起きているらしい。はたしてこれは単なる伝染病なのか―?世界は終わってしまうのか―?



むかし、深夜にテレビ東京なんかをつけると、いつの時代のどこの映画かも判らないような奇妙な作品が放映されていましたが、この『ダークレイン』は確実にその雰囲気が漂っている!「トワイライト・ゾーン」ぽい奇妙さと不気味さがプンプンです。

最初は一体何が起こっているのかとビクビクして観ていましたが、あまりにもその世界観が不条理&ディープ過ぎて、私もどこまでついて行っていいのやら"映画との距離感"が掴みづらくて四苦八苦。物語が進めば進むほどシリアスなのかコメディなのか、怖がっていいのか笑っていいのかさっぱり分からず、これってマニア向けなの?とか思いつつ、結局「えぇぇぇ-??」と困惑させられたまま終わってしまった・・・・・


で、あまりに意味不明だったので、アイザック・エスバン監督のインタビューを読んでみましたら、彼は政治的・社会的な比喩をも含んでいた1960年代の優れたSFものを大変愛していて、この映画はそれらへのラブレターなのだとのこと。うんうん、とても良くわかります。ただ、この『ダークレイン』という映画には政治的意図はないですよ、とは言いつつも、1968年10月2日に起きた【トラテロルコ事件】当時の、権力が人々の個性を奪おうとしてたという時代性をメタファとしてバックグラウンドに持たせたかったと述べています。メキシコシティオリンピック直前、メキシコ市トラテロルコ地区三文化広場で行われていた反政府集会が軍や警察によって鎮圧され、学生や労働者、農民など多数の死者を出したというあまりに悲惨な事件。


The Similars is my love letter to the science fiction of the 1960s, in all its aspects—the aesthetics, the story, the themes, the music. The good science fiction of that time always had social or political commentary, explored metaphorically using a sci-fi or fantasy concept.
To be clear, The Similars was never meant to be a political movie or a polemic. This is NOT a movie about Tlatelolco, this is merely an entertaining sci-fi thriller. But I do like to have that metaphor in the background, that time when people worried that all authority—the family, universities, the workplace, the government—was trying to make us all into the same person, which is what happens in the movie literally.

Interview: Mexican genre filmmaker Isaac Ezban【The Public】

抑圧的で強権的な政府を前に、一方的に人々の自由が制約され黙らされるという世界。個人のアイデンティティさえも奪おうとしていた国家と社会への批判がこの映画の隠しテーマだったのでしょう。これを読むまで本当にちっとも意味が解らなくてすみませんでした。



ただ、歴史云々は抜きにしても、フォーカスを当てた人物を真ん中に置いて背景だけをバーン!と遠ざけていく【ドリーズーム】(ヒッチコックの「めまい」みたいな感じ)とか、ぷらーんとぶら下がった受話器から「もしもし!?もしもし!?」→弦楽器のキン!!キン!!キン!!キン!!という恐怖の旋律だとか、本当に昔の白黒恐怖映画そのものみたいで、時代感覚なるものをすっかり忘れて映像的には完全に見入ってしまいました。

世界には、ほんと色々な映画があるんですねぇ!

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