【スペイン映画】まとめて3本『ラスト・デイズ』『ロスト・フロア』『EVA<エヴァ>』

はなまるこ

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今年に入ってからhuluなどで映画を観ることが多くなりました。

こういうサイトの作品ページって「物語の簡単な説明」「時間」「製作年」くらいしか記載されていないんですね。・・・ということはですよ、鑑賞前に≪他人様のレビュー≫を読んで作品を選ぶ、ということがなくなるんです。で、自分の直感勝負だけで映画を選んでいたらですね、なんと5本連続で【スペイン映画】を観ていたことに気がつきました。なぜだ、私の直感力!(笑)



ただ、【スペイン映画】と言っても「あれ?これはスペイン映画だったのか!」と後になってから気がついたり、「"スペイン"映画だと思っていたら舞台はアルゼンチンなのか!」というようなこともしばしば。

それは、アレハンドロ・アメナーバルやイザベル・コイシェ監督作品のように、海外の俳優を起用したり外国との共同制作を積極的に行うといったボーダーレスな"グローバル化"が進んでいたり、あるいは、スペイン語圏のマーケットの大きさなども関係しているのかもしれません。何と言っても、スペイン語を母国語とする人口は、中国語話者に次いで世界第2位ですからね。これは強い!

さらに、カルロス・サウラやペドロ・アルモドバル監督といったハリウッド映画とは一線を画す、独特の存在感を放ち続ける映画人の存在も、エネルギーとパワーに溢れた【スペイン映画】支える土台ともなっているのでしょう。

・・・・というわけで、せっかく5本連続で大当たりしましたので、今日はこれまでに書き切れなかった【スペイン映画】をまとめて書き残しておこうと思います。英語圏の映画だけでは知ることのできない、新しい物の見方や視点が私には新鮮に映った3本です(他2作品は、前回&前々回up分)。
『悪人に平穏なし』 (2011/スペイン)
『オートマタ』 (2014/スペイン、ブルガリア)






『ラスト・デイズ』 (2013/スペイン)








ラスト・デイズ [DVD]


●原題:LOS ULTIMOS DIAS / 英題:LAST DAYS
●脚本、監督:ダビ・パストール&アレックス・パストール
●出演:キム・グティエレス、ホセ・コロナド、レティシア・ドレラ、マルタ・エトゥラ 他
●アメリカ・ニューヨークで、3ヶ月もの間部屋から出ることができなかった少年が自殺した。そしてオーストラリアのシドニーにあるオペラハウスでは、数百人の観客が外へ出ることを拒否、スペイン・バルセロナでは外へ追い出された男が心臓発作で死亡・・・。外に出るだけで発作を起こす「広場恐怖症」というパンデミックに陥った世界。人々が外へ出なくなったこの世の中で、愛する妻と再会するために一人の男が下した命がけの決断とは・・・。




この映画は、前回"バカ殿状態"で観た『悪人に平穏なし』の刑事、ホセ・コロナドの出演作品ですので、個人的に観ないわけにはいかなかった!のであります。いやー、コロナドおじさま、最初こそイケメンビジネスマンでしたが、あっと言う間にくまごろう。ううん、それでもステキです。


『ラスト・デイズ』はいわゆる≪パンデミック映画≫というジャンルになるわけですが、理由は明らかにならないまま「広場恐怖症」で世界中の人々が外出できなくなるという、ちょっと変わった設定になっています。

そのため、人々は移動するために地下鉄の線路や下水道といった"地下"で活動する他ないんですね。で、そんな"お先真っ暗"な状況の中、愛する人の元へ辿りつこうとする主人公たちがアチコチで人間どうしの内輪もめの中で闘っていく・・・・簡単に言えばそんなお話になっています。



バルセロナ市内にある数々の観光名所(有名な通りや駅、デパートや劇場)などが舞台となっていて、次々とアクション・ステージが展開していきます。人の手が入らなくなって荒廃した街中を野生動物が歩き回る画などは、CG丸わかりとはいえ相当力が入っています。

実際「ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、ローマといった都市は映画では見慣れているけれど、この映画では自分たちにとって身近な街が舞台になっているからすごくエキサイティングだった」「親近感を覚えた」という感想がスペインの人々からは出ているようです。 
参考:Barcelona como nunca la has visto en: “Los últimos días”

↑このサイトでは『ラスト・デイズ』内で、実際に主人公たちが移動していった足跡を辿った地図もあるんですよ。スペインに行ったことのない私にとっては、非常に分かりやすい観光案内になってとても面白かったです。この映画をご覧になった方は是非!



そう、鑑賞中に映画の所々で気になったのは螺旋状の階段のカットでした。何度も何度も、様々な場所で映し出されるんです。

あまりにも登場するので、これは"終わりのない混乱"だとか"先行きの見えない不安感"というイメージなのかなぁ?なんて思いながら観ていたのですが・・・・たぶん最後までこの映画を見届けて感じたのは、それは人間のDNA、ずっと先に続いていくであろう人間の未来を表していたのかな。そして、こんな時代だからこそ赤ん坊が必要なんだよ、赤ん坊こそ希望の象徴なんだよ、という思いも込められていたのかもしれません。

ネタバレはしませんが、敢えて言うなら、同じスペイン映画『オートマタ』がそうであったように、未来への希望を余韻の中に残すこの世界観にとても好感を覚えました。


そうそう。この映画は【スペイン映画】という括りにはなっていますが、同じ国の中でも使用言語が異なる場合もありますよね。『ラスト・デイズ』の場合も、 “Déu Meu” “si us plau” “ajudeu-me” “on ets” “vinga”といった カタルーニャ語が使われるシーンが何度か出てきます。

日本語吹替版だとその違いがあまり解らないのですが、日本語字幕版で観ると、くまごろうのエンリケがカタルーニャ語を理解できないために事態がよく把握できないという焦りや、独りになったマテオの口から出る言葉がカタルーニャ語だったりするシーンに、登場人物たちの心境やパーソナルな部分が反映されているようにも思いました。こういった細やかな表現って、映画では大事ですよね。





『ロスト・フロア』 (2013/スペイン、アルゼンチン)








ロスト・フロア Blu-ray


●原題:SEPTIMO / 英題:7TH FLOOR
●脚本、監督:パチ・アメスクア
●出演:リカルド・ダリン、ベレン・ルエダ、オズバルド・サントロ、ルイス・シエンブロウスキー、ホルヘ・デリア 他
●普段と変わらない朝。セバスチャンはいつものように、二人の子供を学校に送り出すため、元妻のアパート7階を訪れる。子供たちは、父親と“1階まで競争だ"と階段を駆け下りる。セバスチャンはエレベーターで1階まで降りるが、子供たちの姿が見当たらない。忽然と姿を消した子供たちの行方を必死に探すセバスチャン。そして、事件は衝撃の展開を迎える・・・! <未体験ゾーンの映画たち2015>上映作品。




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出ましたっ『永遠のこどもたち』のベレン・ルエダと、『瞳の奥の秘密』のリカルド・ダリンの共演作品。おまけに、本国スペイン・アルゼンチンでは劇場動員数150万人を超える大ヒットを記録したという本格派スパニッシュ・スリラー!

・・・・こう聞くと、両作品をご覧になったことのある方なら「なんて、なんて、濃い組み合わせなんだぁぁ!」と想像が広がるのですが、なんとこの映画、お話自体はすご―――く小さいんですよ。

父親はエレベーターで7階から、同時に子供たちは階段を使って降りることにして「どっちが早く着くか競争だ!」とか言って楽しんでいたのに、一階に着いたら子供達の姿は見つからない。あれ、子どもたちはどこに行ってしまったの!?という。なんてなんて、ちっちゃなお話なんだ・・・・・。これ、よく映画にできたものだなぁと思いました。俳優の魅力全開で引っ張っていく自信がなければ、こんなストーリーで映画化はできないでしょう。日本では・・・・ちょっと想像できないなぁ。


ま、映画のスケール感は置いておいてですね、確かにこのシチュエーションはイヤなものがありますよね。子どもとの遊びの中で、ちょっとした道を二手に分かれてふざけて歩いたりする時に、ほんの僅か、ほんの数秒ほど目を離しただけなのに姿が見えなくなる。こういう、ヒヤッとする親の心境をうまーく使った緊迫感はとてもリアルで、ちょっと新しい"手に汗映画"だったと思います。



この、カシャンカシャンと手でドアを開け閉めする旧型のエレベーター。現代的な建築物の中で独特の存在感を放つこの趣きあるエレベーターは、もう一つの≪主役≫と言っていいかもしれません。

主人公が上へ下へと移動するという画的にはなんとも退屈になりそうなシーンでも、動いているゲージの外側がちゃんと見えることで"動的効果"がありますし、ピタッと閉ざされた完全な密室ではないためエレベーターの外からの音もちゃんと耳に入ってくるんですね。建物内で子どもを探すという、ややもすれば単調になりそうなストーリーに"動き"を与えてくれているのが、この燻銀のエレベーターでした。

無機質でしんとした建物内から聞こえる物音やエレベーターの稼働音。高級そうなアパートメント内で響く音には独特の緊張感があって、思わず「子どもたちの声が聞こえてくるのでは・・・・」と、思わず耳を澄ませてしまいました。



しかし。
子は鎹(かすがい)と申しますが、仕事優先で家庭を顧みず自分勝手だった夫がこれを機に真剣に奥さんに向き合い、家族一緒によかったよかった!と肩を抱き合う・・・・・と思っていたところで、まだあと30分近く残っている!なんちゅー展開だ。

ですので、最後はですねぇ・・・・わたくしちょっと悲しくなってしまいました。もしかしたら複数のエンディング・バージョンがあったのかもしれないなぁ、なんて思ってしまったラスト。あともう少し、何とかしてあげたかったなぁ。



※良い子のみんなは、階段やエレベーターでは遊ばないようにしようね!






『EVA〈エヴァ〉』 (2011/スペイン)









EVA<エヴァ> [Blu-ray]


●原題:EVA
●監督:キケ・マイーヨ
●出演:ダニエル・ブリュール、マルタ・エトゥラ、アルベルト・アンマン、クラウディア・ベガ 、アン・キャノヴァス、ルイス・オマール 他
●2041年。ロボット科学者アレックスは子供型アンドロイドの制作を始める。かつて憧れ、今は弟の妻となった女性の娘、エヴァにヒントを受け開発を進めるが、エヴァとアレックスの間には共通の秘密があった・・・。エッジの効いたSF、ホラー、サスペンスなどの映画を集めた2012年【“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション】上映作。





スペイン映画界では、スペイン国産の【SF】はまだまだ歴史が浅いジャンルと認識されています。しかしそのような中でユニークでエネルギッシュ、才能のある映画監督たちが多く生まれ、独特のストーリー展開や想像もしなかったような素晴らしい映像美などに出会うことも多くなったような気がします。その自由な発想に驚かされたり、振り回されたり・・・スペインのSF映画からは、毎回新鮮な印象を受けるのです。

'The Last Days' could herald a new era of sci-fi movies in Spain
『TIME CRIMES タイム クライムス』 (2007/スペイン)


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この『EVA〈エヴァ〉』という映画も、間違いなくその一つ。

輝くように真っ白で冷たい雪の風景が人間の住む本物の自然を、また、ヴィンテージ風の小物やレトロな色遣いが人間的な温もりを感じさせており、最先端の技術が見られる近未来を舞台としているというのに、ロボットたちのいる風景をより自然なものとして感じさせてくれる不思議なSF映画です。


ただですねぇ・・・・・
なんと酷いことに、日本での作品キャッチコピーやあらすじ説明が、初めから思い切りネタバレしているんですよね。なんですかこれは!

※私は運よくこの"キャッチコピー"に出会わないまま鑑賞できたので、物語の"核"の部分がストンと落ちてきて直球で胸打たれましたが、できれば今初めてこの作品を知ったという方や、まだ何の情報にも触れていないという方は、絶対にキャッチコピーをご覧にならず何も知らない状態でこの映画を鑑賞されることをお勧めいたします。本当に本当に!



「人生は三つの要素、愛と友情と裏切りで出来ている」といいます。

『サムライ』や『リスボン特急』を撮ったフレンチ・ノワールの巨匠 ジャン=ピエール・メルヴィル監督の言葉でもあり、日本ミステリー界の重鎮 西村京太郎先生の「人生は愛と友情と、そして裏切りとでできている」というエッセイのタイトルでもあるのですが、そう、人生を彩るものは笑顔だとか歓び、楽しみばかりでは決してないですよね。

人生の中で経験していく悲しみや怒り、過ち、涙、後悔、忘れかけていた記憶や心の奥に秘めた誰にも言えない思いなど・・・・あらゆる感情や経験を包み込んだものすべてが人生を豊かにしていくのでしょう。自分の心さえ制御できぬままに何度も間違えを繰り返したり、人を傷つけたり、それでも許したり・・・・そうやって"生きていく"ことが人生だというはずなのに。主人公アレックスの、見ているこちらが息苦しくなるほど濃密な空気に包まれたダンスシーンが、それを象徴しているでしょう。


¿qué ves cuando cierras los ojos?
「目を閉じたら何が見える?」



この映画がラストで見せる最も崇高で美しい光景は、主人公アレックス(とA.I.を生み出そうとしている人間たち)のエゴと、その行為がどれほど愚かで残酷なものであるのかを突き付けるものでした。このあまりに美しくて大きな悲しみに包まれたラストに、私はもうただ茫然・・・・・・。この喪失感といったら、ねぇもうホント言葉もありませんでした。とても悲しいのだけれど、でももう一度だけ観てみたくなるような、そんなSF映画との出会いでした。


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