映画感想をまとめて2本 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』『ブレードランナー 2049』

はなまるこ

はなまるこ

40度を超すような暑さは通り抜けていきましたが、日本列島を襲った台風や震災の影響も重なり、なかなか積極的に映画を観よう、感想を書こうという気力が起きないまま1,2か月が過ぎてしまいました。

今年の夏の暑さは(も?)本当に異常で、我が家の庭では毎年種も蒔かないのに6,7月ごろから次々と花を咲かせて楽しませてくれた朝顔たちも今年は全くと言っていいほど芽が出ず、つるも伸びず。もうすっかり諦めていた9月も後半になったここ数日で、急にグングンとつるを伸ばし始め、今日なんて「今が盛り!」とばかりに20も30も花を咲かせて"爆咲き"状態になっています。植物には発芽するのに最適な温度や条件がありますから、それが完全にズレてしまったんでしょうね。

というわけで。
なんとか、このブログの【管理画面】まで辿りついた今、メモは書いてあったので久々に映画の感想をちゃちゃっとまとめておこうと思います。今日はいつ観たんだっけ・・・と自分でも???状態の映画を2本です(笑)。






『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 (2014/イギリス、アメリカ)








イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 [Blu-ray]


●原題:THE IMITATION GAME
●監督:モルテン・ティルドゥム
●出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、ロリー・キニア、アレン・リーチ、マシュー・ビアード、チャールズ・ダンス、マーク・ストロング 他
●1939年。ドイツ軍と戦う連合軍にとって、敵の暗号機“エニグマ”の解読は勝利のために欠かせない最重要課題だった。しかしエニグマは、天文学的な組み合わせパターンを有しており、解読は事実上不可能といわれる史上最強の暗号機だった。そんな中、イギリスではMI6のもとにチェスのチャンピオンをはじめ様々な分野の精鋭が集められ、解読チームが組織される。その中に天才数学者アラン・チューリングの姿もあった。しかし彼は、共同作業に加わろうとせず、勝手に奇妙なマシンを作り始めてしまう。次第に孤立を深めていくチューリングだったが・・・・。




数年前のアカデミー賞で様々な分野のノミニーだったこと以外、まったく前情報を入れずにネタバレなしの状態で観たのがよかったのか「こ、この人が【チューリングテスト】の人だったのか!」と、出てくる内容すべてに素直に驚いてしまいました。タイトルだけ見ると、スリリングな駆け引きのあるミステリーもの、みたいですけどね。


周りの空気が読めず、会話の言葉をそのままに受け取ってしまい、ジョークが通じず、融通も利かないアラン・チューリング。そんな彼をカンバーバッチがとてもナチュラルに演じていて、チームワークがうまくいかない感じだとか解読作業が行き詰っていく様子だとかが手に取るように伝わってきました。「プロジェクトX」を見ているみたいに。

エニグマの解読に成功した後も、物語は続いていくんですね。

敵国ドイツ軍に"解読成功"の事実を知られないよう、どの攻撃を阻止してどの作戦に対して目をつぶるか?どの情報を活用するか?それらを統計的に分析できるシステムを作り、誰が死ぬか、誰が生きるかという【血にまみれた計算】を続けていき、さらには、スパイを内側に入れることで偽の情報をリークさせるという・・・・

戦争に勝つことと、人命を守ることにこんなに差があるなんて。これまで「戦争映画」というジャンルは観てきたつもりでしたが、そこで見た大切な人の失われていく命や残された人々の悲しみやが"戦争"というデザインされた計算の上に行われていたということ、多くの人々の命を踏み躙るようにして成り立っていたものだったとは・・・・これが事実だったなんて、重い衝撃を受けました。



一方で、彼らに課せられた任務と並行して描かれるのが、人とかかわることが苦手だったチューリングの波乱に満ちた人生でした。独特な感性を持つチューリングにも一緒にいて居心地の良い相手がいたこと。彼を理解してくれる人がいたということ。そして、ジョーンという盟友を持てたこと。彼にも幸福な時間があったのだと信じたいです。

同性愛者でもあったチューリングは、ただ大切な人を想いながら、他の人たちと同じように静かな暮らしを送りたかったことでしょう。この映画は、映像もセリフも音楽も大変分かり易く作ってあり、非情な世界に身を置きながらもそこに選択肢を持つことも出来ないチューリングの苦悩というのも割と型通りの描き方をしていましたが、それでもやはり心に残るのは「チューリングにはもっと穏やかな人生を送ってほしかった」という切ない気持ちでした。人が当たり前のように送る人生を、彼は持つことが出来なかったんですね。



ノーベル経済学賞を受賞した天才数学者ジョン・ナッシュを描いた『ビューティフル・マインド』もそうでしたが、並外れた頭脳の持ち主が、それを持ったが故に精神の不安定さを深めていく姿はつらいものがあります。コンピューターやAIの基礎を生んだと言われる彼のような比類なき頭脳を、この世界が、人類の歴史が放っておくことは無理だったのでしょう。脇をキーラ・ナイトレイやマーク・ストロングといった確かな存在感が支える中で、天才と言われる人の悲しみが心に残る映画でした。








『ブレードランナー 2049』 (2017/アメリカ)








【Amazon.co.jp限定】ブレードランナー 2049 (オリジナルカード付) [Blu-ray]


●原題:BLADE RUNNER 2049
●監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
●出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、マッケンジー・デイヴィス、シルヴィア・フークス、レニー・ジェームズ、ロビン・ライト、ジャレッド・レトー、ショーン・ヤング、ヒアム・アッバス、エドワード・ジェームズ・オルモス 他
●荒廃が進む2049年の地球。労働力として製造された人造人間“レプリカント”が人間社会に溶け込む中、危険なレプリカントを取り締まる捜査官“ブレードランナー”が活動を続けていた。LA市警のブレードランナー“K”は、ある捜査の過程でレプリカントを巡る重大な秘密を知ってしまう。一方、レプリカント開発に力を注ぐウォレス社もその秘密に関心を持ち、Kの行動を監視する。捜査を進める中で次第に自らの記憶の謎と向き合っていくK。やがて、かつて優秀なブレードランナーとして活躍し、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消した男デッカードの存在に辿り着くが・・・。




私を映画の世界へと引き込んでくれた作品は、3つ。
テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』(1985年)、フリッツ・ラング監督の『メロトポリス』(1926年)、そして1982年の『ブレードランナー』。偶然にもすべてSF映画でした。つまり、私の中で【映画=見たことのない世界へと誘ってくれるもの】と決定づけてくれたのが、この三作品だったのです。

『ブレードランナー』という映画は、公開当時こそ興行収入的に失敗した作品だと言われていますが、私がビデオで観たのは1990年代。その頃には既に【SF映画の金字塔】【カルト的な人気を博す作品】と位置づけられ、マニアックな方々からの絶大なる支持と熱狂を帯びた、映画史においても意義のある作品という位置づけになっていました。


でも、ファンたちの熱狂をよそに、ハリソン・フォードは映画の話になると本当にそっけないし、リドリー・スコット監督も嫌気がさしているように見えました。

デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー(字幕版)

膨れ上がる予算、誰も想像できない美術を要求してくる完璧主義者のスコット監督。拘りと疲弊と緊迫が入り混じる撮影現場を追ったドキュメンタリー映画『デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー』と、そしてそこから生み落された『ブレードランナー』の世界を思うと、続編なんて夢のまた夢のように思えました。その後の世界を描くなんてありえない!と。

それに私は『ブレードランナー』の世界を、この後の世界でハリソン・フォードがまた引き続きデッカードを演じる姿なんて見たくなかったんです。


というのも・・・・
それまでずっとファンの間で議論されてきた【デッカードはレプリカントなのではないか?】というテーマが明らかにされる"怖さ"があったからです。【デッカード=レプリカント説】というものは、もうずーっと主流派として根強くあり、それなりの根拠もありました(ガフの作るユニコーン折り紙など)。それでも、それでも私は「デッカードは人間なんだ」と思っていたかったんです。誰かを愛すること、自己犠牲の精神を持てること。そこに私は、事実はどうであれ"人間"としてのデッカードを見ていたかったのです。私の奥深いところまで流れ込んでいたこの大切な想像の世界を、"単純な映像"などで明らかにはしてほしくなかったから。続編なんて望んではいなかったのです。

それでも。新たな主演がライアン・ゴズリングであり、ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を務めるとわかった時、あ、もしかしたら"単純な映像"になんてならないかもしれない、あの世界観を継げる人は彼らで良いのかもしれない、と感じるものがありました。言葉数は少ないまま複雑な感情表現を得意とするゴズリングと、『複製された男』『メッセージ』という独特の映像スタイルを持つヴィルヌーヴ監督。彼らがスクリーンで放つトーンが、レプリカントと人間とが混在する、あの鬱々とした静かでダークな美しさを併せ持つ『ブレードランナー』の世界に繋がるような気がしたのです。







あぁ、やっぱりデッカードはレプリカントだったのかもしれない。

『ブレードランナー 2049』を観て、遂に私もそう思いました。そのように見えたのか、私がそう見たのか。いずれにせよ、そう感じた時、それならば・・・・愛したり犠牲となったり子孫を残せるというのが"人間"だと思っていたのなら、それを見ているこの私は本当に"人間"なんだろうか。私の記憶は"本物"なのだろうか。身体的な痛みだけでなく、心の痛み、恐怖、愛情、悲しみ、歓び。それがもし、何らかのデザインだとしたら・・・・。"彼ら"との違いなんて、一体どこにあるのだろうか。

人間とは。
レプリカントとは。

そんな思いが巡り続け、悲しい気持ちになって観終わった物語でした。が、これは『ブレードランナー』の世界が見事に引き継がれたという証でもあるでしょう。

降りしきる雨の中、"命"の炎が消えていく瞬間を観る者の心に焼き付けた『ブレードランナー』のロイ・バティー。そして、降り積もる雪の中にまるで包まれるようにして傷ついた体を横たえる『2049』のK。見事な続編だったと思います。ヴィルヌーヴ監督には感謝の思いでいっぱいです。


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Comments 2

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宵乃  
No title

まさに血にまみれた計算でしたね…。
戦争の英雄が重いものを背負っているのはよく描かれますが、ここまで心にズシンとのしかかってきたのは初めてかもしれません。
実話な上に、チューリングの人となりを丁寧に描いているので目を背けることは許されないというか…。

>彼にも幸福な時間があったのだと信じたいです。

ですね。彼らとの出会いがなければ、たとえ戦争がなかったとしても孤独に苛まれていたかもしれません。

あと『ブレードランナー 2049』は未見ですが、なかなか評判がいいみたいですね。観る時は前作を見てからじっくり観たいと思います!

2018/09/27 (Thu) 09:19 | EDIT | REPLY |   
はなまるこ  
★宵乃さんへ★

宵乃さん、こんばんは!

私はてっきり「解読できて万歳!よかったね!」で終わるのかと思っていたんですよ。甘かった・・・。
そこで戦争を終わりにはできないのか、スターリングラードの攻防戦もノルマンディ上陸作戦も本当は情報を握っていたのか、そう思ってとても重苦しい気持ちになりました。しかも非情な仕事をさせられながら、最後にはプライベートを明かされ、救った国家から罰せられ、41歳の若さで命を絶つことになるなんて。映画のラストは畳み掛けられるようなショックで茫然としてしまいました。

ですから、この映画を観てほんの少しでも彼の"偉業を知ることができて本当に良かったと思います。映画の存在意義でもありますよね!アカデミー賞で脚本賞を獲った時の脚本家グレアム・ムーア氏のスピーチが素晴らしかったので、下に引用しておきますね。


アラン・チューリングは、このような舞台で皆さんの前に立つことができませんでした。でも、わたしは立っています。これは不公平です。16歳の時、わたしは自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、周りに馴染めないと感じたからです。でも、いまここに立っています。この映画を、そういう子どもたちに捧げたい。自分は変わっている、どこにも馴染めないと思っている人たちへ。君には居場所があります。変わったままで良いのです。そして、いつか君がここに立つときが来ます。だからあなたがここに立ったときには、君が次の世代に、このメッセージを伝えてください。ありがとう。
グレアム・ムーア

【脚本家が明かす9つの秘密】より引用
https://wired.jp/special/2015/imitationgame/02/


あ!そうだ!
『ブレードランナー2049』は、すっかりあの世界観にはまってしまってしばらくボーっとしてしまいました。時間的にも前日譚をあわせると3時間近くになって、そういう意味でもフラフラでした(笑)。濃~い世界観ですが、どうぞお時間のある時にぜひぜひ!

2018/09/27 (Thu) 23:22 | EDIT | REPLY |   

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