『危険がいっぱい』 (1964/フランス)

はなまるこ

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危険がいっぱい


●原題:LES FELINS(もしくはLE CRIME ET SES PLAISIRS)/英題:THE LOVE CAGE
●監督:ルネ・クレマン
●出演:アラン・ドロン、ジェーン・フォンダ、ローラ・オルブライト、アンドレ・オウマンスキー 他
●ギャングのボスの愛人に手を出したことから追われる身となった、いかさま師の青年マルク。かろうじて救世軍の施設に逃げ込んだ彼は、慈善のためそこを訪れた若く裕福な未亡人バーバラの目に運よくとまって、彼女の屋敷に住み込みの運転手として雇われることに。屋敷には、使用人同然の扱いを受ける彼女のいとこメリンダも一緒に住んでいたが、やがてマルクは、さらにもうひとり何者かが邸内に隠れ住んでいることに気づく・・・。




ルネ・クレマン監督×アラン・ドロンといえば『太陽がいっぱい』ですが、もともとドキュメンタリー的レジスタンス映画を撮って評価を得、リアリズム追及の骨太さが抜きん出ていたのがクレマン作品の特徴でした。

その後、押し寄せてきた"ヌーヴェル・ヴァーグ"の波に押され、また「商業主義に魂を売った」とまで言われたクレマン監督への批判の中で、かなり埋もれがちな評価となっている『危険がいっぱい』ですが、私はモノクロの美しい光と影の演出も贅沢で、(中盤まではややもたつくものの)後半のスピーディでサスペンスフルな展開には目を離せなくなり、想像以上の好印象を持ちました。

・・・あ、この映画には全く関係ないのですが、私はゴダールやトリュフォー、エリック・ロメールといったヌーヴェル・ヴァーグ作品には勿論それはそれで十分楽しませてもらっていますが、クレマン監督に対するこの「商業主義的」という言葉にいつも「何が悪い!!」と妙に反発してしまいます。戦後ブルジョアの若造たちが何を言う~!と(笑)。



脱線しましたが・・・、ワケありげな美女二人が住む屋敷へと辿り着き、この後登場人物がもう一人増えてそれぞれの思惑が入り乱れていく辺りからは、何が起こるか分からずドキドキの展開に。また、自業自得とはいえギャングたちに命を狙われ、あれよあれよという間に面倒な事態に巻き込まれていくアラン・ドロン。彼の軽薄で女ったらし、でもどこか陰があって美しく、欲望に忠実で傲慢な青年役は正しく適役ですね。



共演の一人で若かりし頃のジェーン・フォンダがこの映画の仏題の如く"子猫ちゃん"のように軽く愛らしく登場するのですが・・・、この映画を観終わったあとは「彼女にやられた!!」の一言でした。真っ白のドレスを纏ってお飾りのように出演していたのかと思いきや、終盤、強烈なパンチを繰り出す彼女の前でアラン・ドロンの陰が薄くなっていくなんて~。全然予想していなかった私は唖然!でした。

撮影当時のジェーン・フォンダは、父ヘンリー・フォンダとの確執から米国を飛び出してフランスへと新天地を求めていた頃でした。彼女の持つ反発心、貪欲さ、エネルギッシュさ、独立心や孤独といった実人生での姿が、この映画での役柄に見事に反映されているような気がしてなりません。ま、ラストに見せるあの執着心がリアルであったらホラー以外の何ものでもありませんが(笑)。





『地下室のメロディー』でもそうだったけれど、映画的に見て隙のないアラン・ドロンのパーフェクトな身のこなし、その優美さは観ていてまったく飽きることがありません。それはまるで、音もなくしなやかに近づいてくる"猫"のよう。どこか犯罪の香りが漂う妖艶な寡婦のバーバラは"女豹"といったところでしょうか。誰がどんな爪を隠しているのか・・・!?眩暈のように揺れるラストシーンは悪夢そのもの(ヒッチコック劇場みたい!!)。

96分という短篇のようなタイトさで、飽きずに楽しめたサスペンス映画でした。

「スパイ大作戦」シリーズや『燃えよドラゴン』など、インパクトある映画音楽を生み出していったラロ・シフリンが音楽を担当した初期の作品としても興味深かったです。

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