『地獄の7人』 (1983/アメリカ)

はなまるこ

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地獄の7人 [DVD]


●原題:UNCOMMON VALOR
●監督:テッド・コッチェフ
●出演:ジーン・ハックマン、ロバート・スタック、フレッド・ウォード、レブ・ブラウン、ランドール・“テックス”・コッブ、パトリック・スウェイジ、ハロルド・シルヴェスター、ティム・トマーソン 他
●ベトナム戦争集結から10年。ローズ大佐は、ベトナムで捕虜になった息子が必ず生きていると信じて、行方を探し続ける日々を送っている。ある日、一枚の航空写真から息子がラオスの捕虜収容所に居ると推測。大佐はかつての息子の戦友達を集め、捕虜救出作戦を企てる。強い信頼と友情で結ばれた7人の男達が再びベトナムへと向かうことに・・・!!






「ベトナムの共産化を食い止めるため」という建前のもと、当時の米・中ソのイデオロギー対立がそのまま反映されたその戦争にはゴールも出口もありませんでした。

一体何の目的で自分たちが闘わなくてはならないのか?何が自分たちの敵なのか?わからないまま狂気の世界に放り込まれていった若者たちの多くは、無事に戦地からへ帰還できたとしても社会生活に順応できず苦しむことに・・・

アメリカ近現代史に触れる際、絶対に避けて通れないこの「ベトナム戦争」は、アメリカ合衆国と国民に与えた影響(というより癒されることのないトラウマ)が凄まじく、アメリカ映画を観る上でも様々な形でキーワードになることが多い気がします。この『地獄の7人』もそんな作品の中の一つだと言えます(※参考:ベトナム戦争を扱った映画)。が、残念ながらこの物語からは、ベトナム戦争を極端にアメリカ側から捉えた一面性しか感じられませんでした。






確かに、ジーン・ハックマンの、一人の人間として父親として、たった一人の息子を想う姿には泣かされるものがあります。行方不明者の捜索や交渉を政府に任せていても遅々として進まず、自力で武装して奪回したい!子どもをこの手に取り戻したい!と願う親の思い。それは、現実世界において北朝鮮の拉致問題を抱える日本人としての自分にも重なるものでもあり、ラスト、ヘリの中での彼の表情はセリフなどなくとも突き刺さるほどに伝わってきます。


しかしその一方で、この映画の中で「ラオス人やベトナム人たちに思うことは何もないのだ!」と言わんばかりに、"敵"を虐殺していくシーンなどを観て、鑑賞中やその後に私の中でほろ苦いものが残ったのも正直な気持ちです。それは、やはり私がベトナム戦争のあった時代を生きた人間でもなく、当のアメリカ人でもないからかもしれませんが・・・


Uncommon Valor, Common Virtue: Iwo Jima and the Photograph that Captured America


例えば、原題の「UNCOMMON VALOR」という言葉から連想するのは、硫黄島の闘いでの"Among the Americans who served on IWO JIMA, uncommon valor was a common virtue."(硫黄島に従事したアメリカ人の間では、並外れた勇気が皆に共通した美徳だった)という有名な言葉です。


この映画の原題も「並外れた勇気」なんですね。
事実、心を病んでしまった元兵士たちの荒んだ生活ぶりも描かれるあたり、彼らを単なる傭兵として描くつもりもないわけで、地獄となってしまった人生から再び這い上がり、立ち上がって"並外れた勇気"で再生しよう、奮起しようとすることへの感動・・・・この物語に心躍り拍手や賛美を贈るアメリカ人のレビューは幾らでも見かけます。

しかし私はその視点――"並外れた勇気"や正義を振りかざして武力で攻め入ること――に対して違和感を覚えるのです。



この映画はアメリカ側から描いた物語であり、ベトナム戦争におけるMIA(ミッシング・イン・アクション=戦闘中行方不明者)への対策は不十分で家族は置き去りになっていたこと、捕虜の人権蹂躙は決して許されないこと、戦争は綺麗事では済まされないものだ、ということも理解はできるのです。

が、それとと同時に、この映画自体の物語性やスタンス、歴史観、そしてそれを受け入れて賛美しているレビューを読んでしまうと、家族を救い出したいという純粋な思いをここに描かなくてはならない物語は、私から見れば勇気というよりも悲劇としか言いようがありません。




主要キャストの中には、まだ役者として駆け出しの頃のパトリック・スウェイジの姿も。
やる気と意気込みだけは一人前で、息巻く若い元海兵隊員役を好演しています。彼のその必死さがわかるシーンは、戦闘中行方不明者を抱える家族の苦しみが伝わってきます。

戦争は、誰も彼もを憎しみの渦に巻き込み、人生を奪っていく残酷なものだと改めて痛感させられました。


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