『ワールド・オブ・ライズ』 (2008/アメリカ)

はなまるこ

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ワールド・オブ・ライズ


●原題:BODY OF LIES
●監督:リドリー・スコット
●出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ、オスカー・アイザック、サイモン・マクバーニー 他
●死と隣り合わせの危険な任務に身を削るCIAの工作員フェリス。彼の上司ホフマンは、もっぱらアメリカの本部や自宅など平和で安全な場所から指示を送るベテラン局員。生き方も考え方も全く異なる彼らは「ある国際的テロ組織のリーダーを捕獲する」という重要任務にあたっていたが、反りの合わない2人はフェリスがイラクで接触した情報提供者をめぐる意見でも対立する。フェリスは、強引かつ非情なホフマンに不満を募らせながらも任務を遂行していくのだったが・・・。




邦題『ワールド・オブ・ライズ』の原作は、ワシントン・ポストの副編集長でありコムラムニスト、そして小説家でもあるデヴィッド・イグネイシャス(David Ignatius)の「Body of Lies」。

これは、姿の見えない組織のカリスマ的リーダーを引きずり出すために嘘で塗り固められた死体(ボディ・オブ・ライズ)を敵に送り込むことという原題の意味に繋がっています。

中東問題やCIAの活動について詳しい彼の小説はその専門知識の高さとリアリズムが高く評価されており、更に徹底的に細部にまで拘りを持つリドリー・スコット監督による映画化となっただけあって、CIA内部の諜報活動およびそのシステム的な部分は勿論なのだとは思いますが、「ハリウッド映画」といえども所々に簡単なアラビア語やコーランの引用も入れるなどイスラム圏の生活感までもを丁寧に描いている点に、実はとても感心させれました。


例えばディカプリオちゃんが潜伏生活で着込んでいるセーターの柄は明らかに地元コーディネイトのものだし、ブルーグリーンの瞳が美しいディカプリオちゃんの目をブラウンに変えてムスリムっぽさを演出していたり、ヨルダン地元の女性が(なんとビックリ)チャイ屋さんでお茶を飲む時の周囲の男性たちの強い視線だとか、異性との握手を拒む表情やそれを見つめる周囲の人々の目のショットをうまく挟んでみせるなど、『イラク-狼の谷-』など反米中東映画に見慣れていた私でもほぼ違和感なく受け入れることが出来ました。

石油利権を巡って中東を舞台にCIAや大企業が絡む映画ではジョージ・クルーニ主演の『シリアナ』もありましたが、いずれにしても【アメリカが中東で行っていることは何なのか?】という強いテーマは共通するものがあります。

冷戦後のCIAが予算を失い弱体化とともに官僚化し、911が引き起こされた土壌はどのように出来上がっていったのか?という自国批判まで。






ラッセル・クロウ演じる上司の名字が「ホフマン(Ed Hoffman)」なのは(ドイツ系かもしれませんが)【ユダヤ系】を暗示させていてちょっと面白いなとも感じました。因みにディカプリオ演じるフェリスが恋に落ちる女性の名前「アイシャ」は、スンナ派では一番と言ってもいいくらいポピュラーで人気のある名前なので、これも分かり易くていいなと。


映画的には・・・
フェリス中心の目線で進むので、彼が信用し疑う者を同じ角度で追うことになるストーリーは一見退屈です。日本では「アクション・サスペンス超大作!!」とドーンと宣伝していましたが、テーマがテーマだけに娯楽映画にしては地味ですし、社会派にしては楽観的部分があるのも否めません。

が、ホフマンの子どもたちが、彼に世話をしてもらっていても冷めた顔をしているところなど、細かいけれど巧いなと思いました。子どもって"ながら"作業されているのは分かりますもんね(笑)。一見お世話上手の器用さがありながら非情・冷酷さを併せ持つホフマンの姿は「自分を"アメリカ"気取りするな」と言ったフェリスの言葉に被るものがあります。





原作者イグナシアスの主要テーマに沿い、アメリカの政治的欺瞞と不信を描いた『ワールド・オブ・ライズ』は、エンターテイメント作品として地味ながらも細部に拘って仕上がっていましたし、中でも最終的にフェリスが下した決断は、最も対米・中東感情に配慮したラストだったと思います。

それにしてもディカプリオちゃんは、環境問題や政治問題にも積極的に取り組む仕事熱心ないいこに育ったなー。それが嬉しい映画でした。


Body of Lies author discusses Leonardo DiCaprio


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